意味

書く・描く・画くの違いとは?|意味の違い・使い分け・例文をわかりやすく解説

「書く・描く・画く」は、どれも「かく」と読む同音異義語です。
しかし、意味や使い方は同じではなく、使い分けを間違えると、日本語に違和感が出てしまいます。

・文章を書くは「書く」でいいのか?
・絵を描く、図を描く/画く、どちらが正しいのか?
・「未来を描く」と「未来を画く」は同じ意味なのか?

この記事では、「書く」「描く」「画く」の違いと使い分けを、

・最初に結論(比較表)
・次にそれぞれの意味と例文
・最後に、よくある迷いどころと子ども向けの説明

という流れで、順番に整理していきます。

「どの漢字を使えばいいのか分からない」というモヤモヤを、この記事で一度すっきりさせてしまいましょう。

3つの違いは「対象」と「表現の深さ」

まずは、3つの「かく」の違いを一目で分かるように整理します。

主な対象意味・イメージ日常での頻度
書く文字・記号・文章情報や考えを文字として記録する非常に多い
描く絵・情景・心のイメージ見たもの・想像したものを表現する多い
画く図形・線・設計図など線や形を描いて図を作る(古め、専門的)少ない

ざっくり言うと、

・文字をかく → 書く
・絵や情景、心のイメージをかく → 描く
・図形や線、図面などをかく → 画く(ただし現代では描くの方が一般的)

と覚えておけば、多くの場面で迷わずに済みます。

さらに、イメージで分けると次のようなフローチャートになります。

表現方法の選択フローチャート
  1. 文字・文章・記号ですか?
     → はい → 書く
     → いいえ → 2へ
  2. 絵や情景、心の中のイメージですか?
     → はい → 描く
     → いいえ → 3へ
  3. 図形・線・設計図など、技術的な図ですか?
     → はい → 画く(または描く)
     → どれでもない → 文脈に応じて判断

ここから先は、それぞれの「かく」をもう少し丁寧に見ていきます。

「書く」の意味|文字・記号を使って情報を残す

「書く」は、文字・記号を使って情報を記録するときに使う、いちばん基本的な動詞です。

・鉛筆で文字を書く
・ペンでサインを書く
・パソコンで文章を書く
・黒板に板書を書く

といった場面で使われます。「絵」や「心のイメージ」ではなく、あくまで「文字情報」が主役です。

書くの定義とニュアンス

書く
= 文字や記号を用いて、考え・情報・内容などを目に見える形に記録すること

ポイントは「文字」「記録」という2つのキーワードです。
素早くメモを取るのも、じっくり小説を書くのも、どちらも「書く」に含まれます。

書くのよくある使用シーン

・日記を書く
・手紙を書く
・メールを書く(タイプする、という意味で)
・レポートを書く
・議事録を書く

ビジネスの場でも、「書類を書く」「報告書を書く」「企画書を書く」など、非常によく使われます。

書くの例文(ビジネス/日常)

・「会議の内容を忘れないように、ノートにメモを書いておく。」
・「取引先への挨拶メールを書く前に、先方の情報を確認した。」
・「毎晩、寝る前に3行だけ日記を書くようにしている。」
・「上司から、『自分の考えを文章に書いてみなさい』と言われた。」

いずれも、主役は「文字」「文章」です。
ここに絵を入れたい場合は「描く」を使うことになります。

「描く」と迷いやすいケース

ときどき、こんなニュアンスの違いで迷うことがあります。

・人物像を書く
・人物像を描く

意味としてはどちらも「人物について述べる」ことですが、

・事実や情報を列挙するイメージ → 人物像を書く
・性格や感情、雰囲気まで立体的に表現する → 人物像を描く

とニュアンスが少し変わります。
「描く」の方が、より表現的で、イメージをふくらませる響きがあります。

「描く」の意味|絵・情景・イメージを表現する

「描く」は、絵や図、情景、心の中のイメージなどを、目に見える形に表現するときに使います。

一般的には「えがく」と読みますが、「かく」と読む場合もあります。

・風景画を描く
・イラストを描く
・漫画を描く
・小説で人物の心情を描く
・未来像を描く

といった場面で使われます。
文字や情報ではなく、「イメージ」や「表現」が中心になるのが特徴です。

描くの定義とニュアンス

描く
= 対象となるものの姿・形・雰囲気・心の状態などを、絵や文章で表現すること

ここでは、

・目に見えるもの(風景・人物・物体)
・目に見えないもの(心情・理想・未来)

の両方を扱える点がポイントです。

「描く」が使われる具体的な場面

  1. 絵やイラストを描く
     例:「彼女は動物のイラストを描くのが得意だ。」
  2. 漫画・アニメ・デザインの世界
     例:「新しいキャラクターデザインを描く仕事をしている。」
  3. 小説や映画での心理描写
     例:「この小説は、主人公の孤独感を丁寧に描いている。」
  4. 抽象的なイメージ
     例:「自分なりの理想の未来を思い描く。」
       「彼は常に新しいビジョンを描いている。」

「未来を描く」「夢を描く」「理想を描く」などは、すべて「描く」が自然で、「画く」を使うことはまずありません。

描くの例文(アート/文学/抽象表現)

・「キャンバスいっぱいに、色とりどりの花を描く。」
・「このアニメは、日常の小さな幸せをやさしく描いている。」
・「彼女は、自分の頭の中に思い描いた世界を文章にしている。」
・「10年後の自分の姿を具体的に思い描いてみる。」

ここで、「10年後の自分の姿を思い書いてみる」とは言いません。
イメージを表すときは、やはり「描く」がしっくりきます。

「画く」の意味|図形や線を表す、やや古風・専門的な動詞

「画く」は、「描く」と非常によく似ていますが、
現在の日本語では、使われる場面がかなり限られた漢字です。

読みは「えがく」または「かく」ですが、
一般的な文章では「描く」が使われることが多く、「画く」を目にする機会は多くありません。

それでも、意味としては次のような傾向があります。

・図形を線でかく
・設計図や図案をかく
・幾何学的な形をかく

といった、「線・形・図」に重点がある場合に使われやすい漢字です。

画くの定義とニュアンス

画く
= 線や形を組み合わせて、図形や図面などを構成すること

ニュアンスとしては、

・やや古めかしい
・専門的・技術的
・文章・会話ではあまり見ない

といった特徴があります。

画くが登場する典型的なシーン

・円を画く
・線を画く
・三角形を画く
・設計図を画く

ただし、現代の教育現場やビジネス文書では、「円を描く」「グラフを描く」と表記する方が一般的です。

「画く」をあえて使うと、少しかしこまった感じや、古風な文章の印象になります。

画くの例文(図形・設計・技術系)

・「コンパスを使って、正確な円を画く。」
・「建築家は、新しい家の設計図を画いてクライアントに説明した。」
・「教師は、黒板に三角形を画きながら証明の仕方を説明した。」

これらは「描く」と書いても大きな問題はありませんが、
「線や形」を強調したいときや、古典的な文章では「画く」が選ばれることがあります。

現代日本語では「描く」で代用されることが多い

実際のところ、一般的な文書、学校教育、ビジネス文書などでは、

・図を描く
・グラフを描く
・円を描く

というように「描く」を使うケースが圧倒的です。

したがって、

・日常的な文章では「画く」を無理に使う必要はない
・迷ったら「描く」で統一しても問題ない

と考えておくと、過剰に悩まずに済みます。

よくある間違いと迷いやすい表現の比較

ここからは、実際に迷いやすい表現を取り上げて、「どの漢字が自然か」を整理します。

「未来を描く」?「未来を画く」?

自然なのは、圧倒的に

・未来を描く
・将来のビジョンを描く

です。

なぜなら、「未来」や「ビジョン」は、目に見える線や形ではなく、頭の中のイメージだからです。
ここで「画く」を使うと、「未来を図として線で描く」という、かなり特殊なニュアンスになります。

「理想の未来を心に描く」
「10年後の自分を具体的に思い描く」

というように、「描く」を使うのが自然です。

「図を描く」?「図を画く」?

どちらも意味としてはほぼ同じですが、
現代日本語では「図を描く」が一般的です。

・授業中、ノートに図を描く。
・先生は、黒板に図を描いて説明した。

教科書やビジネス文書などを見ても、「図を描く」「グラフを描く」が主流で、
「図を画く」とあえて書かれることは多くありません。

専門書・技術書・古い文章などでは「画く」が用いられることもありますが、
日常的な文章では、「描く」で統一しても十分自然です。

「イラストを描く」 vs 「イラストを画く」

イラストの場合は、基本的に

・イラストを描く

を使います。

イラストは線や形で構成されていますが、「作品としての絵」を表す側面が強く、
図形としての線よりも、表現としてのイメージが重視されます。

そのため、「描く」の方がしっくりきます。

「文章を書く」 vs 「文章を描く」

文章に関しては、ほぼ例外なく

・文章を書く

です。

ただし、小説や詩などの世界では、
「短い文章の中に世界を描く」というように比喩的な表現として「描く」が使われることもあります。

・「この作家は、わずか数行で人物像を描いてみせる。」

ここでの「描く」は、「表現する・浮かび上がらせる」の意味で使われており、
「文章を書く」とは少し役割が違います。

シーン別・「書く/描く/画く」の正しい使い分け

場面ごとに整理すると、さらに迷いが減ります。

ビジネスシーン

・報告書を書く
・議事録を書く
・企画書を書く
・図を描いて説明する
・グラフを描いて売上推移を示す

ビジネスの場では、専門書でもない限り、「画く」を使う必要はほとんどありません。
「書く」と「描く」だけで十分対応できます。

アート・創作のシーン

・油絵を描く
・イラストを描く
・漫画を描く
・キャラクターデザインを描く

絵・デザイン・漫画など、創作の世界では「描く」が基本です。

文章の世界では、

・物語を書く(書く行為全体)
・登場人物の心情を描く(表現)

のように、「書く」と「描く」を使い分けることが多くなります。

教育のシーン(学校・塾など)

・ノートに答えを書く
・黒板に漢字を書く
・教科書に図を描き写す
・コンパスで円を描く

教科書や指導案でも、「描く」が一般的な表記です。
「コンパスで円を画く」と書く学校もありますが、どちらも意味は同じです。

子どもにも説明できるシンプルな覚え方

最後に、小学生にも伝えられるような、簡単な覚え方をまとめておきます。

  1. 文字を書くとき → 書く
     例:名前を書く、日記を書く、答えを書く
  2. 絵をかくとき → 描く
     例:絵を描く、似顔絵を描く、風景を描く
  3. 図や丸をかくとき → 画く(が、本当は描くでもOK)
     例:三角形を画く、円を画く(学校では「円を描く」と教えるところも多い)

ひとことで言えば、

文字=書く
絵・イメージ=描く
図形・線=画く(または描く)

と覚えておくと、ほとんどの場面で困りません。

まとめ|日常では「書く」と「描く」を押さえれば十分

最後に、この記事のポイントをもう一度整理します。

・書く
 文字や記号、文章など、「情報」を記録するときに使う
 例:手紙を書く、レポートを書く、メモを書く

・描く
 絵・情景・心のイメージなど、「表現」が中心のときに使う
 例:絵を描く、人物像を描く、未来を描く

・画く
 図形や線、設計図など、線と形を構成するニュアンスが強い
 ただし、現代ではあまり一般的ではなく、多くは「描く」に置き換えられる

日常的な文章や会話であれば、
まずは「書く」と「描く」の2つをしっかり使い分けられるようになれば十分です。

そのうえで、

・技術的な文章や専門書では「画く」が出てくることもある
・迷ったときは「対象」と「イメージの有無」で判断する

という視点を持っておけば、「書く・描く・画くの違い」で悩む場面はぐっと減っていきます。

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